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日与えられておりますルカ五章一七節から二六節の箇所は、「中風の人の癒し」といわれるところです。これは、ルカだけではなく、マタイにもマルコにも記さ
れております。それぞれで言わんとしている本質のところは同じです。聖書はどこを切っても同じ顔が出てくる金太郎飴のようなものです。どこを開いても、主
イエス・キリストの御顔が出て来ます。けれど、その主イエスの御顔をどの方向から見るかで、少し変わってきます。ルカによる福音書の「中風の人の癒し」の
出来事は、私達はどのように聴けばよいのでしょうか。 主イエスが家で皆に教えておられました。大勢の人が家に押しかけています。中風を患った友達を男たちが主イエスのもとに運んで来ました。しかし、家の中は 人が一杯で、主イエスのそばに近づくことができません。そこで男たちは屋根を壊して穴を開け、友人を床ごと、主イエスの前につり降ろしたのでした。主イエ スはこの中風の男を癒されるのです。癒しの奇跡の物語として聞くことができます。 しかしそれと共に、もう一つ注目しなければならないことがあります。それは、ファリサイ派たちと主イエスとの対立です。彼らは何のために主イエスのところ に来ているのでしょうか。病気を癒してもらうためではありません。主イエスの話しを聞きに来ているのです。聞きに来ると言っても、主イエスがどんな人物か を確かめに来た、というところです。 ですから、主イエスの御言葉を素直には聞きません。疑いながら、偉そうに聞いている。 そこに中風の男が、屋根から床ごとつり降ろされてきます。主イエスは、中風の男ではなく、彼を連れてきた友人に目を留めて、彼らの信仰を見られて「人よ、 あなたの罪は赦された」と言われるのです。この主イエスのお言葉に、彼らは喜んだでしょうか。主イエスが何故このようにお語りになったのか、よく分からな かったのではないでしょうか。彼らは、主イエスに友人を癒していただきたかっただけでしょう。けれど、主イエスは「あなたの罪は赦された」とおっしゃるだ けです。 主イエスのこの御言葉に反応したのはファリサイ派たちでありました。「神を冒涜するこの男は何者だ。ただ神のほかに、いったいだれが、罪を赦すことができ るだろうか。」と、心の中で考えたのです。主イエスに対して、不審を抱くのです。罪を赦すことができるのは、ただ神様のほかにはおられません。彼らにとっ て主イエスは、人間です。それ以上でも、以下でもない。彼らは主イエスのことを知らなかったのです。 主イエスは彼らの考えをお知りになり、このようにお答えになります。「何を心の中で考えているのか。『あなたの罪は赦された』と言うのと、『起きて歩け』 と言うのと、どちらが易しいか。」実際に自分が言うとすると、どちらが易しいでしょうか。中風の人に、「起きて歩け」と言うことができるでしょうか。それ ができないから、床に寝かされて運ばれてきているのです。その人を癒す力がないならば、「起きて歩け」と言うことは難しすぎます。しかし、「あなたの罪は 赦された」と言うことならば、実際に罪が赦されたのかどうか見えるわけではないので、こちらの方が言いやすいのではないか、と考える人は多いのではないで しょうか。 けれど、ファリサイ派の人たちにとっては、「あなたの罪は赦された」と言う方が、難しいことだ、と考えていたのではないでしょうか。なぜならば、彼らが考 えている病気の原因は「罪」だからです。罪があるから人は死ぬのです。罪があるから、病気になるのです。ですから、ファリサイ派の人たちにとっては、ここ に連れてこられた男が中風の病気にかかっているのは、彼が罪人だからなのです。「あなたの罪は赦された」と言うならば、罪が赦された結果を見せなければな らないのです。つまり、すぐにでも癒されなければならないのです。癒されなければ、嘘つきであり、神様を冒?したということになるのです。軽々しく口にで きる言葉ではないのです。 しかし、「起きて歩け」と言うことならば、ファリサイ派たちにとっては、もっと容易く言えるでしょう。なぜならば、起きて歩くことができなければ、「彼は 罪人だから、起き上がって歩くことができないのだ」と決めつけてしまえば良いのです。その言葉の責任は病気の罪人がとるのであって、言った者が責任をとる 必要は無いと考えているのです。 病人を連れてきた者たちも、罪の赦しのことよりも、友人の癒しを求めていたでしょう。そういう意味では、中風の者も、その友人たちも、主イエスについて正 しく理解をしていないのです。けれど、ファリサイ派たちと違い、彼らは、主イエスが必ず友人を癒してくださると、信じているのです。ですから、人の家の屋 根を壊してでも、主イエスのもとに連れて行ってあげたかったのでしょう。しかし、主イエスが言われたのは「あなたの罪は赦された」でしたので、どのように 対応すればよいのか分からず、戸惑ってしまったのではないでしょうか。主イエスの前に立つとき、主イエスのことがよく分からなければ、彼らのように自分の 思いを主イエスにのせようとしてしまいます。しかし、主イエスからはただ言葉のみなのです。その言葉の重さを知らなければ、主イエスに失望してしまうので す。主イエスから離れてしまうのです。ファリサイ派たちがそうであったようにです。しかし、主イエスの御言葉にとどまり続けるならば、自分の思いや考えを 遥かに超えた恵みをお与えくださると知らされるのです。主イエスがおっしゃったことが出来事として起こるのです。 主イエスは、「人の子が地上で罪を赦す権威をもっていることを知らせよう。わたしはあなたに言う。起き上がり、床を担いで家に帰りなさい」と言われます。 罪を赦す権威を主イエスはお持ちなのです。そしてそれを形として現すことがおできになるのです。中風の人は、主イエスの言われるとおり、起き上がり、床を 担いで帰ります。ただ、サッサと帰ったわけではありません。彼は神様を賛美しながら家に帰って行ったのです。中風の人が癒されるということは、ただ病気が 癒されたわけではありません。病気が癒されただけならば、単なる奇跡物語です。しかしここで起こっているのは、罪の赦しがあり、それが中風の人が癒される という形として現れているのです。 ファリサイ派たちは、自分たちが不審を抱き、拒否しようとした主イエスが罪を赦す権威をお持ちの方だということを、目の前で見せつけられるのです。主イエスがどのようなお方であるのか、知らされるのです。 しかし、主イエスが示された権威を人々が知るのは、教会が誕生してからでしたが、この時、主イエスのみ業によって、中風だった人が、そしてみんなが神様を賛美するようになりました。けれどこの後、まことの罪の赦しが形として現れます。主イエスの十字架と復活です。 その時、主イエスの者たちであるキリスト者は、主イエスが真の神であると、賛美するようになったのです。 中風の人やその友人たちが、主イエスによって罪赦され、癒されたことは、後の教会の人々は、自分たちに起こった出来事として受け止めているのです。主イエ スに救われたからこそ、中風の人の友人たちがしたように、自分たちも主イエスのもとに愛する友を教会へと連れて帰ろうとするのです。そして、私達の罪を赦 すために十字架に掛かり死んで、そして復活された主イエスの永遠の命に生かされて、教会はみんなが主イエスを神とあがめ、賛美するようにと、その先頭に 立って賛美する喜びに与っているのです。 （2013年10月27日特別伝道礼拝）
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