| 幼児の洗礼に疑問を感じる人は、幼児には自分の信仰や意志、自分の告白や応答がないから洗礼も無意味ではないかと考えるのではないでしょうか。それらができるようになったら、それらを得てから洗礼を受けるべきではないか、と。つまり、受洗を受けるには「まだ相応しくない」と。 では、いつになったら相応しくなるのでしょうか。大人は自分の意志に基づいて告白するから洗礼の恵みを受けられるということなのでしょうか。洗礼において与えられる恵みに相応しい者などいないはずです。 私たちは、いくら歳を取っても、どれほど立派な大人になって、どれほど分別がつくようになっても、恵みに相応しい者ではありません。私たちは、本来受ける資格のない恵みをいただくのです。 私たちは、「子供のように」神の国に入り受け継ぐのでしょう。ただいただくのです。私たちは、信じるから救われるのでも、告白するから救われるのでもありませんし、洗礼を受けたから救われるのでもありません。まして、私たちが救いの神を選んだからでもありません。神が、私たちを選んでくださる、一方的な選びと恵みによって救われたはずです。幼子の親と教会は、その神の恵みの中で、神から幼子をいただいたことを信じるのです。 しかし残念ながら、現代の親は、このあたりが曖昧だと思います。クリスチャンでさえ、子供は作ったり持ったりするものだ、と思っているところがあります。自分の家族計画だと勘違いしているのです。しかし、そこに幼子がいるのは、神の御計画以外のなにものでもありません。 果たして親たちは、子供に学歴と預金と、あわよくば仕事の口を与えることには全力を注いでいます。でも、「あなたは神の恵みのうちに洗礼を受けている」という事実に生きることには、ほとんど関心がないように見えます。 宗教改革者のルターは、生涯で最も苦しい時、「自分は洗礼を受けている」と机に書き、叫んで、苦境を耐え得たそうです。これは意味のないことでしょうか。 |