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主イエスの誕生、キリストの到来、すなわちクリスマスへの備えをする時期を、教会では「アドベント」と言います（日本語では「待降節」）。これは、「近づき」「到来する」という意味です。 神は、その全能をもって、神と私たち被造物との間の永遠の隔〔へだ〕たりを、超越して来られます。だから、神の全能は、神の愛でもあります。神の超越は、愛によって永遠を乗り越えて来られる超越です。 ところが、神がその全能の力を尽くすほどに来てくださっているのに、人間の罪はそれを無視します。愛を冷やし無にします。神の超越的な熱い到来も、人間 の無関心、傲慢、あるいは臆病がそれを感じさせなくさせます。そして、世に到来され、人として生まれた神の御子イエスは、人に棄てられ、唾され、侮られ、 罵られ、十字架につけられて殺されます。 しかし、神は、そんな世と人間を裁こうとして来られたのではなくて、人間が神に立ち帰って、神のものとして生きるようになるために、来られたのです。だから、神の愛と恵みを信じない者、感じない者の傍らにおとずれ、その戸を叩き続けられるのです。 誰がそれに気づくのでしょうか。気づかないのかも知れません。それでも、私たちが命を得るためには、神はどんな痛みをも厭〔いと〕わない、そうまでして来られます。 それは、いわば《神の冒険》です。アドベントとは、神のアドベンチャーなのです。神が、敢〔あ〕えて来られることです。神は、敢えて、私たちのところに来ておられ、すでにご自分の命をもって、私たちに救いを与えておられます。その意味で、私たちは、すでに恵まれている者なのです。 使徒パウロも、「今は恵みの時、今は救いの日」と言ったように、今、すでに恵みの時であり、今日は救いの日なのです。そのことに気づかねばなりません。 「信じない者は、すでに裁かれている」と聖書は言います。それは、「信じないと裁かれるぞ」ということではありません。「すでに恵まれている」のに、それ を無にしているということです。それが、すでに裁きになっている、ということです。 今は、裁きの時ではありません。神があえて御子を遣わしたのは、私たちが生きるためです。神が、永遠の隔たりを遥〔はる〕かに越えてやって来ておられます。人となって十字架について、血を流して死なれるほどに、その全能をもって来ておられるのです。 「待降節」と言いますが、「私たちが」待つというより、「神が」すでに激しく到来し、待ちつづけておられることを知る時なのでしょう。 牧師 藤盛勇紀
（2008年12月）
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